近年、東南アジアの新興国を中心にオフショア開発の注目度が高まっています。従来から人気のあるベトナムやフィリピンに加え、タイもビジネスインフラの充実を背景にオフショア先として注目されるようになりました。
本記事では、まず、タイのオフショア開発のメリット・デメリット、費用相場や成功のポイントに加え、ベトナムとの比較も行いながら、具体的な開発会社の選定方法を解説します。最後にはベトナムオフショアに関する参考も紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
タイでのオフショア開発が注目される背景と市場動向
タイのIT産業の成長と政府施策
まず、タイ政府は「Thailand 4.0」政策の一環として、IT産業やイノベーション分野を重点的に支援しています。具体的には、首都バンコクをはじめ、チェンマイやプーケットなど地域を問わず通信インフラの整備が進んでいます。さらに、BOI（タイ投資委員会）による税制優遇や補助金制度など、海外企業を誘致する取り組みが活発です。
引用：JETRO「タイ」情報
政府系機関によるスタートアップ支援や教育施策の拡充も相まって、国内IT産業は年々拡大傾向にあります。そのため、オフショア開発だけでなく、タイ国内市場向けのシステム開発やサービス展開も大きく伸びているのが特徴です。
ASEAN諸国（ベトナム・フィリピン・ミャンマー）との比較
オフショア開発先として人気のあるベトナムやフィリピンと比べると、タイはすでに製造業や観光業が長年発展しており、インフラ面の安定性や日系企業の進出数では優位に立っています。一方で、ミャンマーのように急成長が期待される新興市場と比べると、給与水準はやや高めです。
引用：JETRO「タイ」情報
- ベトナム: エンジニア数が多く、コスト面で魅力。さらに、日本語対応エンジニアも増加中。
- フィリピン: 英語が公用語でコミュニケーションしやすいが、人件費はタイと同程度かやや安い。
- ミャンマー: 新興市場で人件費がより安価。しかし、政治・社会情勢の安定度に課題あり。
タイ人エンジニアの特徴と教育水準
タイのエンジニアは大学や専門学校のITコースでしっかりと基礎を学び、特に英語も比較的得意とする人材が増えています。ただし、ビジネスレベルの日本語を話せるエンジニアはまだ限られており、英語ベースでのコミュニケーションが中心になることが多いです。
- ベトナム: エンジニア数が多く、コスト面で魅力。日本語対応エンジニアも増加中。
- フィリピン: 英語が公用語でコミュニケーションしやすいが、人件費はタイと同程度かやや安い。
- ミャンマー: 新興市場で人件費がより安価。政治・社会情勢の安定度に課題あり。
また、製造業の集積地として長年培われたエンジニアリング教育のノウハウがあるため、制御系や組込み開発など産業向け分野に強い技術者も少なくありません。
タイのオフショア開発のメリット
人件費の安さと豊富な若年労働力
タイは近年の経済成長により物価や給与水準が上昇傾向にあるものの、日本国内と比べればまだまだコストメリットがあります。特に地方部（チェンマイやコラートなど）ではバンコクより安価な労働力を確保できる場合が多く、優秀な若年層の採用が期待できます。
親日的な文化と柔軟なコミュニケーション
タイは「微笑みの国」と呼ばれ、ホスピタリティ精神が強い国民性で知られています。そのため、長年の日本企業進出により日系企業への理解も深く、親日的な雰囲気を感じる場面が多々あります。英語力に関しては個人差がありますが、文化的に柔軟な対応をしてくれるエンジニアが多い点は魅力です。
地理的利点：東南アジアの中心地へのアクセス
タイはインドシナ半島の中心に位置し、ASEAN各国へのアクセスが比較的容易です。日本からの直行便も豊富で、フライト時間は約6〜7時間。バンコクの国際空港（スワンナプーム空港）はアジアのハブ空港の一つでもあるため、ビジネス出張がしやすく、現地訪問によるリレーション強化を図りやすいのがメリットです。
成熟市場と新興要素のバランス
タイは観光大国であり、製造業の集積も進んでいることから、すでに一定の市場成熟度を持っています。一方で、IT分野ではまだ国内の需要拡大余地が大きく、新たなサービスやアプリを生み出しやすい環境が整いつつあります。成熟と新興のバランスが取れていることで、多様なビジネスチャンスが期待できます。
タイを最有力候補として検討しにくい2つの理由
日本語対応エンジニアの不足
タイ国内では英語が通じる場面が多いものの、ビジネスレベルの日本語を扱えるエンジニアはまだ限られています。したがって、要件定義や仕様書が日本語のみの場合、翻訳コストやブリッジSEの配置が必要になるケースもあるでしょう。英語でのコミュニケーションに慣れていない企業にとっては少々ハードルが高いかもしれません。
政治的・社会的な変動リスク
タイは政治的なデモや政権交代など、比較的頻繁に社会・政治情勢が変化する傾向があります。もちろん、治安そのものは比較的安定していますが、大規模な政治的イベントが起こると企業活動に影響が出る可能性もゼロではありません。したがって、投資や進出を行う前には、最新の状況を常にチェックし、リスク管理を徹底する必要があります。
最も選ばれている国は？
現在はベトナムに注目が高まっています。 理由としては新日国であり、日本語が話せる若者が多く、エンジニアも豊富なため多くの日本企業がベトナムのオフショア開発を利用しています。 日本だけでなくヨーロッパでも多く活用されています。
タイのオフショア開発にかかるコスト・人件費の相場
※以下の金額はあくまで目安となり、為替レートやエンジニアのスキル・経験により変動します。
エンジニア職種別（プログラマ・デザイナー・PM）の単価目安
| 職種 | 月額単価目安（日本円） | スキルレベル例 |
|---|---|---|
| プログラマ | 約8.4万円～約21万円 | Web・モバイル開発 |
| デザイナー | 約7万円～約16.8万円 | UI/UX、グラフィック |
| PM / ブリッジSE | 約12.6万円～約22.4万円 | 要件定義・通訳・進捗管理 |
他のアジア主要国とのコスト比較
- ベトナム: タイより若干安めだが、都市部はコスト上昇傾向。日本語人材が比較的多い。
- フィリピン: 英語堪能な層が多いが、都市部（マニラなど）の給与も上昇傾向。
- ミャンマー: コストはタイより安い場合が多いが、政治情勢やインフラ面に不安要素あり。
コミュニケーション・マネジメント費用の考え方
オフショア開発ではエンジニアの人件費に加え、以下のコストも発生しやすい点に注意が必要です。なぜなら、
- ブリッジSEや通訳の配置費用
- 現地出張費（渡航費、宿泊費）
- 翻訳・ドキュメント多言語化
- コミュニケーションツール導入・運用費
こうした追加コストを含め、総合的な費用対効果を検討することが大切です。
タイのオフショア開発を成功させるポイント
ブリッジSE・PM体制の確立
タイは英語が比較的通じやすい国ですが、日英バイリンガルのブリッジSEや、現地でプロジェクトをまとめられるPMがいると断然スムーズになります。言語と開発プロセスを理解した人材が要件定義から開発・テストまでを管理することで、認識のズレを最小限に抑えられます。
ツールを活用した円滑な連絡・進捗管理
- Slack / Microsoft Teams: リアルタイム連絡
- Backlog / Redmine / Jira: タスク管理・進捗可視化
- Google Meet / Zoom: オンライン会議・画面共有
こうしたツールを使えば地理的な距離を感じさせず、日々の進捗や課題を迅速に共有できます。時差は日本と2時間程度なので、ミーティング時間も比較的調整しやすいでしょう。
仕様書・設計書の翻訳とレビュー体制
日本語資料だけでは伝わりにくい場合があるため、英語ドキュメントを用意するか、翻訳を通じたレビュー体制を整えましょう。また、翻訳ツールや専門スタッフを活用し、互いの認識にズレがないか逐一確認することが重要です。
定期訪問・現地面談とリレーション強化
タイは渡航しやすい国の一つでもあるため、数カ月に一度のペースで現地を訪問し、対面でコミュニケーションを図ると信頼関係が深まります。文化的背景を理解し、チーム全体のモチベーションを高めることがプロジェクト成功の鍵となります。
タイ vs ベトナム：オフショア開発比較
| 比較項目 | タイ | ベトナム |
|---|---|---|
| 人件費 | 都市部はやや高め。地方ならコスト圧縮も可 | 東南アジアでも安価な方だが上昇傾向 |
| エンジニア層 | 工業国としての基盤があり、制御系に強み | 若年人口多く、ITエンジニア数が豊富 |
| 政治情勢 | 比較的安定しているが、政局変動リスクはあり | 外資誘致が活発で安定性も増している |
| 強み | 親日的文化、英語対応の柔軟さ、ビジネスインフラ | 日本語堪能なエンジニア多数、実績豊富 |
| 弱み | 日本語人材が少なく、コミュニケーションコスト高 | 都市部では人材獲得競争激化でコスト上昇中 |
このように、両国とも日本企業の進出が多く、オフショア開発先として人気ですが、タイは工業・観光の成熟度が高い分、安定したインフラやマインドセットが整っている点が魅力です。一方、ベトナムはより多くの日本語対応エンジニアや、豊富なITベンチャーが存在する点が強みとなっています。
タイで実績のあるオフショア開発企業を3社紹介
SoftSquare Group
SoftSquare Groupは、2000年代初頭からバンコクを拠点にITサービスを提供してきた企業で、ERPや基幹系システムの導入支援など、企業向けソリューションに強みを持っています。プロジェクトマネージャーには英語が堪能なスタッフが在籍しているため、海外企業とのコミュニケーションも円滑に進められます。実際に、タイ国内の大手企業の販売管理システムを開発した実績や、クラウド基盤を活用したアプリケーションの運用サポート、さらに製造業向けのIoTソリューションなど幅広いプロジェクトを手掛けています。
MFEC Public Company Limited
MFEC Public Company Limitedは、タイ証券取引所に上場していることもあり、信頼性と知名度の面で大きな強みを持つ企業です。システムインテグレーションからクラウド、AIソリューションまで対応可能な技術力があり、大規模案件を得意としていることに加え、日系企業との協業実績も豊富です。大手金融機関のコアシステムの開発・保守運用を担当したほか、電子政府関連プロジェクトへも参画して大規模インフラを構築しています。また、日系自動車メーカーの販売管理システムを開発した事例もあり、幅広い業種・業界に対応できる柔軟性が評価されています。
PROEN Corp（プロエン）
PROEN Corp（プロエン）は、データセンター事業やネットワークサービスなどインフラ領域を得意とする企業です。プロジェクトマネージャーやブリッジSEには英語がネイティブ級のスタッフを配置しており、海外企業とのコミュニケーション面でも安心して任せられます。運用や保守フェーズを特に重視している点も特徴で、24時間体制の監視サービスを提供しているため、システムの安定運用に大きく貢献します。ECサイトや大規模Webポータルのインフラ構築・運用の実績があるほか、日系メーカーのIoTプラットフォーム開発をサポートするなど、多様な分野での実績を重ねており、バンコク都内でのサーバーホスティング事業でも幅広い顧客基盤を持っています。
タイのオフショア開発の進め方
まずは案件の要件定義と見積もりを行い、開発内容や必要スキル、英語対応などを明確にしておきます。次に、開発パートナー候補の実績やチーム構成を比較・面談し、オンラインや現地訪問などで要件のすり合わせを丁寧に行います。
チーム編成では、日本側とタイ側それぞれにPMを配置し、必要に応じてブリッジSEや通訳を加えることで、文化や言語のギャップを最小限に抑えます。さらに、SlackやTeamsなどのツールを使ってリアルタイムで情報共有し、時差が少ないメリットを活かして定期的なオンライン会議を行います。
テスト・レビュー・品質保証の段階では、QAチームが仕様とのズレを確認し、繰り返し検証を行うことでミスを防ぎます。最後に、納品後の運用・保守フェーズでは、追加要件が生じた場合の契約内容や保守体制を整備し、長期的な協力関係を築くことが大切です。
まずは案件の要件定義と見積もりを行い、開発内容や必要スキル、英語対応などを明確にしておきます。次に、開発パートナー候補の実績やチーム構成を比較・面談し、オンラインや現地訪問などで要件のすり合わせを丁寧に行います。
チーム編成では、日本側とタイ側それぞれにPMを配置し、必要に応じてブリッジSEや通訳を加えることで、文化や言語のギャップを最小限に抑えます。さらに、SlackやTeamsなどのツールを使ってリアルタイムで情報共有し、時差が少ないメリットを活かして定期的なオンライン会議を行います。
テスト・レビュー・品質保証の段階では、QAチームが仕様とのズレを確認し、繰り返し検証を行うことでミスを防ぎます。最後に、納品後の運用・保守フェーズでは、追加要件が生じた場合の契約内容や保守体制を整備し、長期的な協力関係を築くことが大切です。
タイ(バンコク)オフショア開発のよくある質問
タイ(バンコク)のオフショア開発は、人材の質とスムーズなコミュニケーション体制が魅力です。本記事では、よくある質問を取り上げながら、成功のポイントや注意点をわかりやすく解説します。
Q1. 英語が苦手ですが、大丈夫でしょうか？
英語力が不安でも、タイ(バンコク)には日本語対応のエンジニアや通訳スタッフが在籍する企業が多くあります。要件定義や進捗管理を日本語で行えるケースも多く、オンライン会議では通訳が同席するなどサポート体制が充実。言語の壁を感じにくい環境なので、英語が苦手な方でも安心してプロジェクトを進められます。
Q2. ベトナムやフィリピンよりコストが高いと聞きますが？
タイの開発コストは他国よりやや高めといわれますが、その分エンジニアのスキルやインフラの整備度、コミュニケーションのしやすさなどが大きな強みです。複雑な要件や最新技術を取り入れる場合でも安定した開発が期待でき、結果的にトータルで見たときのコストパフォーマンスが良い場合も少なくありません。
Q3. 大規模開発にも対応できますか？
はい、タイ(バンコク)には多くの日系大手企業が進出していることから、大規模開発の経験が豊富な企業が多数存在します。プロジェクト管理ノウハウや連携ツールも整備されており、必要に応じて大人数の開発チーム体制を組むことが可能。初期段階で要件を明確にし、日本側とこまめにコミュニケーションを取ることで、スムーズな進行と品質向上が期待できます。
Q4. タイのエンジニアのスキルレベルや開発実績はどの程度ですか？
タイではIT教育を重視する大学や専門学校が増え、基礎的な開発スキルから最新技術まで幅広く学べる環境が整っています。外資系や日系企業のプロジェクトで経験を積んだエンジニアが多く、AIやIoT、クラウドなど先端技術を活用した実績も豊富です。英語や日本語でのコミュニケーションが可能な人材も増えており、品質面でも安心して任せられます。
Q5. タイ現地での労務管理や法的リスクはどうすればいいですか？
タイの労働法や契約関連は日本と異なる点が多いため、事前の情報収集と専門家のサポートが重要です。実績豊富なオフショア開発企業や日系コンサルタントと連携すれば、労務管理や法的リスクを最小限に抑えられます。契約書の作成や弁護士の確認など、万全の体制を整えておくことでスムーズに開発を進められるでしょう。
まとめ｜タイのオフショア開発で競争力を高めよう
タイは親日的な文化と安定したインフラを持ち、コストを抑えたオフショア開発に適した国です。「Thailand 4.0」政策のもとIT市場が急成長し、DX分野の需要も拡大中。ただし、日本語対応可能な人材は限られるため、信頼できる開発会社やブリッジSEの選定、仕様管理・コミュニケーションが成功の鍵です。
一方で、日本語人材や日系企業の進出実績を重視するならベトナムも有力な選択肢。品質や納期、コスト管理には明確なプロジェクト計画と適切なマネジメントが重要です。
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正直、オフショア開発は難しいです。
ただ成功するか失敗するかは一緒にやるパートナー次第です。
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