ベトナムのIT人材が優秀だと知り、ベトナムのエンジニアについて調べている方もいるでしょう。ベトナムは、IT人材のスキルが高く低コストで依頼できるため、オフショア開発の委託先として注目されています。
この記事では、ベトナムのIT人材やIT事情、市場を後押ししている政府の国策などについて紹介します。
ベトナムのIT人材はなぜ注目されている?
オフショア開発の委託先として、インドやフィリピンなども挙げられるものの、ベトナムは群を抜いて人気がある国です。
ここでは、なぜベトナムのIT人材が注目されているのかについて紹介します。
スキルが高い
ベトナムには外資系のオフショア企業が多く設立されており、さまざまなプロダクト経験を積んでいるため、スキルの高いIT人材がほとんどです。
扱えるプログラミング言語やフレームワークの数は日本と同等であるうえに、内容を深く理解しているエンジニアが多い傾向にあります。「AWS」や「GCP」などのクラウドサービスをはじめとしたインフラも普及しており、環境を構築できる人も増えています。
ベトナムのエンジニアの83%が情報系学部を卒業していることも、スキルが高い理由の1つです。情報系学部では、ITについての基礎知識が身につけられ、エンジニアとしての土台をしっかり構築できます。
また「AI」や「セキュリティ」などといった分野に特化して学べるため、高いスキルを備えたエンジニアが多い傾向にあります。情報系学部で培われた理論的思考能力や問題解決能力は、技術の進化が早いIT市場の役に立ち、新しい言語やツールの取得もスムーズに行えるでしょう。
現に、ベトナムの名門大学である「ハノイ国家大学」は、国際プログラミングコンテストで5年連続(2015〜2019年)決勝大会に進出し、好成績を残しています。なお、ベトナム人はスキルアップにかけている時間も多い傾向にあります。
引用:経済産業省「スキルアップ(勉強時間)に関する国際比較」
日頃の勉強の程度は多くないものの、週あたりの平均勉強時間では「3.5時間」と、インドに続いてスキルアップしていることがわかります。最新の技術トレンドに高い関心を持っているため、AIや機械学習などの先端技術についてのスキルアップにも積極的です。
コストが安い
ベトナムのIT人材のコストは年々増加しているものの、日本に比べるとリーズナブルです。具体的には、日本の半分もしくは1/3のコストでシステム開発を依頼できます。
たとえば、日本のシステム開発会社に依頼した場合のエンジニア単価は1人月あたり「50万円〜150万円」程度かかります。一方、ベトナムは「25万〜40万円」程度で依頼が可能です。
日本人と同等、もしくはよりレベルが高いエンジニアに依頼できるため、ベトナムにオフショア開発を依頼する企業が増えています。
IT人材が多い
IT人材プラットホームの「TopDev」によると、ベトナムには約48万人のITエンジニアがいます。ソフトウェアを専攻したエンジニアが、毎年5万7,000人程度社会に進出しており、今後もベトナムのIT人材は増え続けるでしょう。
参考:VIETNAM IT Market Report「TECH HIRING 2022」
日本では、2030年までに79万人のIT人材が不足すると予想されているものの、現時点ではベトナムより多い状況です。 ※2022年時点
国別 | 人口 | IT人材数 | IT人材が人口に占める割合 |
日本 | 約1.251億人 | 約132万人 | 約1.06% |
ベトナム | 約9,819万人 | 約48万人 | 約0.49% |
ただし、少子化による労働力の減少や、ベトナムで毎年社会に進出するエンジニアの数を考慮すると、今後は日本の方がIT人材が少なくなる可能性があります。
また、ベトナムのエンジニアは20〜34歳の年齢層に集中しており、3年未満の経験を持つ若者がIT市場の中心を占めています。
引用:VIETNAM IT Market Report「TECH HIRING 2022」
若いと体力があるうえに育成しやすいため、今後のベトナムのIT市場の成長がさらに期待できるといえるでしょう。
参考:ベトナム人エンジニア・12の特徴【性格的・技術的な観点で解説】|Offshore Diary
ベトナムのIT事情
ベトナムでは、IT市場が急速に成長しており、さまざまな分野で世界中の企業と取引を行っています。政府が国策としてIT人材の育成や市場の拡大を推進していることが、ベトナムがIT市場で成功している理由です。
ここでは、ベトナムのIT事情について詳しく紹介します。
IT市場が急速に成長している
ベトナムのIT市場は著しい成長を遂げており、下記のような分野で世界有数の企業と取引を行っています。
- アプリ開発
- ソフトウェア開発
- 情報セキュリティ
- データサイエンス など
国内のスタートアップ企業も増加しており、非常に活気のある市場です。
近年、ICT市場も急速に成長していて2023年の評価額は「約102億米ドル」、2027年までには170億米ドルを超えると予想されています。
ICT市場とは、IT市場に加えて下記のような「通信技術」に関連する部分も含んでいる市場のことです。
- 通信インフラ
- モバイル通信
- デジタル決済
- eコマース
- クラウドサービス など
中でもeコマースは、人口の多さやインターネットの利用者数の増加により急成長しており、2019年には売上高100億米ドルに達しています。
ICT市場の成長は、通信技術の進化やデジタル経済への移行を支える重要な要素です。ベトナム政府は、積極的にICT市場の成長を後押ししており今後も市場の拡大が期待されています。
国策としてIT教育を推進している
ベトナムでは、国策としてIT人材の教育を推進しています。具体的には、学校全体のデジタル化やIT機器の導入に加えて、小学校3年生から外資系企業に対応するための英語学習とプログラミング教育が行われています。
中学校2年生になると、ソフトウェアのコーディングや専門的なIT科目が必修化されており、ベトナムの若者にとってITやプログラミングは日常的に関わりのある分野です。
政府が主体となってIT人材の育成を推進しているため、ベトナムには優秀なエンジニアが多数存在します。また、民間企業もIT人材の教育に前向きであり、ベトナムの大手IT企業が大学や専門学校を設立する際に出資する事例も増えています。
日本市場への進出を見据えている
ベトナムでは、日本市場への進出を見据えて、日本語教育や日本企業との連携に積極的な教育機関が増えています。第一外国語として日本語を採用する学校も増えており、2018年には学習者数や機関数、教師の人数は世界で第6位です。
参考:海外の日本語教育の現場「各国・地域の学習者数・期間数・(2021年度学習者数順位)」
日本語をある程度理解できるエンジニアであれば、国籍が異なっていてもスムーズにシステム開発を行える可能性があります。たとえば「Aの開発を依頼したのに、Bが納品される」といった、認識の相違によるミスを少しでも防げるでしょう。
また、ベトナムの中でもトップレベルの教育水準を誇るハノイ工科大学では、日本市場向けのIT人材を育成する「ICT高等教育開発支援プロジェクト(HEDSPI)」が実施されています。こうした背景から、ベトナムのエンジニアは日本市場にとって信頼できるパートナーとして注目されています。
ベトナムのIT人材が得意とするプログラミング言語
ベトナムのIT人材は、多彩なプログラミング言語に対応できるスキルを持っているため、幅広い開発ニーズに応えられます。特に「JavaScript」は最も人気のある言語であり、下記のようなフレームワークでも高い対応力を誇っています。
- React
- Node.js
- Angular
- Laravel
- Django
「Java」や「Python」といった汎用性の高い言語も広く利用され、業務システムやWebサービス、AI関連分野の開発も可能です。
参考:Javaとはどのようなプログラミング言語か。特徴、メリット、デメリット、活用事例を紹介|GeNEE
参考:AIで中小企業のホームページ制作を成功させる方法|artclick
また「PHP」は、Webアプリケーション開発に特化した言語として人気があり、「Laravel」のフレームワークを使用して柔軟な開発を行っています。「AWS」のクラウドプラットフォームにも対応できる人材が増えており、オフショア開発における信頼性が高まっています。
下記は、ベトナムのIT人材から人気があるプログラミング言語とフレームワークです。他にどのようなプログラミング言語に対応できるか気になる場合は、参考にしてみてください。
引用:VIETNAM IT Market Report「TECH HIRING 2022」
ベトナムのIT市場は今後もさらなる飛躍が期待できる
ベトナム政府は、国のデジタル化やDX化を推進するため、今後もさまざまな政策を打ち出していくことが予想されます。現に、2020年6月には「2025年までの国家デジタルトランスフォーメーション(DX)プログラムおよび2030年までの方針」を、当時の首相が承認しています。
本プログラムは、2030年までにベトナムが高度なデジタル国家を目指すものです。アナログな業務をデジタル化するだけでなく、人々の生活の質を向上させることを目指しており、下記のような目標を掲げています。
- 年間労働生産性……7%増加
- 光ファイバ・ネットワーク・インフラ……全世帯80%
- 4G・5Gサービスおよびスマートフォンの利用……ユニバーサル化
- 電子決済利用……全人口の約半数
参考:ベトナム社会主義共和国「ICT政策 国家デジタル戦略」
ベトナム政府はIT人材の育成や外資系企業の誘致に加えて、今後は国のデジタル化やDX化を強く推進していくでしょう。
参考:DXとは?3つのステップを徹底解説|ICTオフィス相談室
まとめ
ベトナムのIT人材は、スキルが高いうえに低コストで依頼できるため、日本のIT市場で注目されています。IT人材は毎年増え続けており、若いエンジニアがベトナムのIT市場の成長を支える存在として期待されています。
政府の国策として積極的にIT人材を教育しているほか、日本市場への進出を見据えて日本語を学ばせていることも、日本のIT市場で注目されている理由の1つです。
政府は今後もベトナムのIT市場を後押しすることが予想されており、さらなる発展が見込まれます。ベトナムのIT人材は、日本企業にとって競争力を高めるための重要なパートナーとなるでしょう。
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