2025年｜ベトナムのオフショア開発の現状や今後の動向を解説

近年、多くの日本企業がIT人材不足や予算面の課題に直面しており、その解決策としてベトナムのオフショア開発が注目を集めています。高い技術力とコスト競争力を兼ね備えたベトナムの開発市場は、企業の成長を大きく支えるでしょう。

この記事では、ベトナムのオフショア開発の現状や今後の動向を解説するとともに、依頼するメリットと注意点を紹介します。

ベトナムのオフショア開発の現状

ベトナムはオフショア開発先として最も人気がある国であり、市場規模は75億ドル以上です。政府の支援によりIT市場が急成長しているため、国内外からの投資も集めています。

ここでは、ベトナムのオフショア開発の現状について解説します。

オフショア開発先として最も人気がある

近年、ベトナムはオフショア開発の委託先として人気があります。ベトナムの親日的な文化や勤勉な国民性、競争力のあるコストなどが人気の理由です。

2024年のデータでは、オフショア開発の発注先としてベトナムを選ぶ企業は全体の42%を占め、2年連続で首位を維持しています。

参考記事：オフショア開発白書 2024年版

また、ベトナムの一部の学校では第二外国語として日本語教育を導入し、日本とのビジネス関係を重視しており、日本語を話せる人材も豊富です。

市場規模は75億ドル以上

ベトナムのオフショア開発市場は、近年著しい成長を遂げています。2023年には、ベトナムのIT企業が海外市場から得た総収益は75億米ドルに達し、前年と比較して約7%増加しました。

日本市場は総収益の約60%を占めており、成長傾向は今後も続くと予想されています。2024年には総収益が約80億米ドル、2025年には約90億米ドルに達すると見込まれており、日本市場の割合も引き続き全体の60%を維持すると予測されています。

政府の支援によりIT市場が急成長している

ベトナムのIT市場は、政府の積極的な支援により急速な成長を遂げています。政府は、IT産業を国家戦略の一環として位置づけ、デジタルトランスフォーメーション計画の推進やスタートアップ支援のための資金提供など、さまざまな施策を実施中です。

政府の政策により、ITインフラの整備や教育分野への投資が加速し、EdTech（エドテック）市場も拡大しています。EdTech市場とは、教育分野にITを活用しイノベーションを起こすビジネスやサービス、スタートアップ企業の総称のことです。

たとえば「語学学習アプリ」や「AIを活用した学習ツール」などが挙げられます。2019年のEdTech市場規模は20億米ドルを超え、2023年には30億米ドルに達すると予測されており、ベトナムのIT市場は今後も持続的な成長が期待されています。

参考：日本貿易振興機構 ジェトロ「EdTech市場規模と今後の見通し」

また、ベトナム政府は大学や専門学校と連携し、次世代のエンジニアを育成しています。IT市場の急成長や将来性への期待により国内外からの投資が集まっているため、ベトナムのオフショア開発は今後も持続的に発展していくでしょう。

ベトナムのオフショア開発の今後の動向

ベトナムのオフショア開発市場は、今後も持続的な成長が期待されます。なぜなら、ベトナムのオフショア開発市場は、下記のような需要が高まっている最新技術への対応力が優れているためです。

上記は、今後も拡大すると予想されており、最先端テクノロジーを活用したい企業からの需要が高まっています。

ただし、市場が拡大するにつれ、優秀な人材の確保が難しくなる可能性があります。現に、ベトナムのオフショア開発会社の人件費は年々徐々に上昇しており、さらに人材獲得の激化が予想されるでしょう。

なお、SKILL BRIDGEでは、ベトナムのローカルな実績を持つオフショア開発会社を掲載しています。開発種別ごとに企業や人材を検索できる機能もあるため、プロジェクトに最適なパートナーを効率的に選べます。

ベトナムにオフショア開発を依頼するメリット

ベトナムのオフショア開発はコストを削減しつつ、高品質な開発が行えます。他の国よりコミュニケーションが取りやすいため、プロジェクトがスムーズに進むでしょう。

ここでは、ベトナムにオフショア開発を依頼するメリットを紹介します。

コストを削減できる

ベトナムのエンジニアの人件費は年々上昇しているものの、日本の約1/3～1/2程度に抑えられます。それぞれの人件費の目安は、下記のとおりです。

平均人月単価	プログラマー	シニアエンジニア	ブリッジSE	プロジェクトマネージャー
ベトナム	30万円	48万円	59万円	70万円
日本	40〜60万円	80〜120万円	–	80〜130万円

参考：オフショア開発白書 2024年版

年間にすると、数百万円程度のコストを削減できます。コストを削減できれば、浮いた予算を他のプロジェクトに投資できるため、企業の成長に繋がります。

他の国よりコミュニケーションが取りやすい

多くのベトナムのオフショア開発企業は、英語または日本語に対応できる「ブリッジエンジニア」や「プロジェクトマネージャー」を有しています。そのため、日本側の担当者は言語の壁を感じることなく、スムーズにコミュニケーションが取れます。

また、日本とベトナムの時差は2時間しかないため、他の国よりもオンラインミィーティングや情報共有がしやすく、リアルタイムでのやり取りがスムーズです。スムーズなやり取りにより、スケジュール調整や意思決定スピードが向上し、プロジェクトを効率的に進められます。

高品質な開発ができる

ベトナムのオフショア開発会社には、優秀なエンジニアが多く在籍しているため、高品質な開発が可能です。

ベトナムの大学や専門学校では、IT教育が充実しており、質の高いエンジニアが多数輩出されています。特に、下記のような分野で高いスキルを持つ人材が多く、高度なプロジェクトにも対応可能です。

また、ベトナムのエンジニアは勤勉で学習意欲が高く、新しい技術の習得や下記の国際的な資格取得にも積極的です。

上記の資格は、エンジニアのスキルレベルを客観的に評価する指標であり、プロジェクトの品質向上に貢献します。高品質な開発は、エンドユーザーが満足するほか、企業のブランド価値向上にも繋がるでしょう。

長期的なパートナーシップを築ける

ベトナムにオフショア開発を依頼すれば、長期的なパートナーシップを築けます。

オフショア開発の契約形態には下記の2パターンがあり、ベトナムでは専属チームを中長期的に確保する「ラボ型開発」が定着してきています。

契約形態	概要	メリット	デメリット
請負開発	特定のプロジェクトをオフショア企業に委託し、納品物の完成を目指す契約形態。事前にスコープや仕様を確定し、成果物ベースで契約。	・納期とコストが明確になりやすい ・短期間での開発に適している ・仕様が決まっていれば品質管理がしやすい	・仕様変更が難しく、変更には追加コストが発生 ・短期間の契約のため、継続的な開発には不向
ラボ型開発	専属の開発チームをオフショア企業内に確保し、継続的な開発を行う契約形態。契約期間中、自由に仕様変更や追加開発が可能。	・開発の柔軟性が高く、仕様変更が容易 ・専属チームによる継続的な開発が可能	・契約期間が長くなりがちで、固定費がかかる ・チームの管理が必要で、マネジメントコストが発生

長期的なパートナーシップを築けば、チーム間の信頼関係が深まるため、よりスムーズにコミュニケーションを取ることが可能です。また、今後のプロジェクトの効率化や品質向上、長期的な開発リソースを確保できるメリットもあります。

ベトナムにオフショア開発を依頼する際に気をつけること

ベトナムのオフショア開発は、さまざまなメリットがあるものの、進め方次第では失敗するケースがあります。事前に注意点を把握し、適切にプロジェクトを進行させましょう。

続いて、ベトナムにオフショア開発を依頼する際に気をつけることについて紹介します。

ベトナムの開発チームとのコミュニケーション

ベトナムにオフショア開発を依頼する際は、開発チームとのコミュニケーションに気をつけましょう。

開発チームと上手くコミュニケーションが取れないと、プロジェクトはスムーズに進みません。最悪の場合、納期が遅れたり期待していた成果物が納品されなかったりするケースもあります。

開発チームとスムーズにコミュニケーションを取るには、相手国の文化をよく理解し、曖昧な指示はしないようにしなければなりません。

また、ブリッジエンジニアを活用することも1つの手段です。ブリッジエンジニアは、海外企業と日本企業の間に立ち橋渡し役としてプロジェクトを円滑に進めるエンジニアのことです。

技術的な知識だけでなく、文化的な理解も持ち合わせているため、開発チームとスムーズなコミュニケーションが取れるようになるほか、双方のチーム間の誤解を防ぐ役割も担います。

品質管理とプロセスマネジメント

ベトナムにオフショア開発を依頼する際は、品質管理とプロセスマネジメントに注意しましょう。

品質管理が不十分だとバグや不具合が多発し、リリース後に重大なエラーが発生します。また、プロセスマネジメントが機能していないと、開発スケジュールが曖昧になり納期の遅延に繋がるでしょう。

品質低下や納期遅延が続いた場合、追加の作業が必要となりコストが膨らむため、オフショア開発における「コスト削減」のメリットを受けられなくなります。顧客からの信頼も失うため、今後発注してもらえなくなる可能性もあるでしょう。

品質管理とプロセスマネジメントを適切に行うには「ブリッジエンジニア」や「プロジェクトマネージャー」を設置し、情報共有の窓口を明確にしなければなりません。下記のツールを活用して、作業進捗の可視化も行いましょう。

カテゴリ	活用目的	ツール例
プロジェクト管理ツール	進捗状況の可視化とタスク管理	Jira, Asana, Trello
バージョン管理ツール	コードの変更履歴管理とチーム内共有	Git, GitHub, GitLab
テスト管理ツール	テストケースの管理とテスト結果の記録	TestRail, Zephyr, TestLink

さらに「CMMI」や「SO 9001」などの国際基準に基づく開発プロセスの導入や、テスト工程を徹底し、品質向上を図りましょう。

まとめ

ベトナムのオフショア開発は、下記のメリットをもたらします。

ただし、言語や文化の違い、品質管理などの課題も存在します。綿密な計画と準備、信頼できるパートナーを選んでオフショア開発を成功させましょう。

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