日本国内のIT人材不足は年々深刻化しており、多くの企業が海外人材の採用を検討しています。特に若年層が豊富で技術力が高いベトナムITエンジニアは、コスト効率や文化的相性の良さから大きな注目を集めています。本記事では、ベトナムIT人材を採用する際のポイントや注意点、さらに定着・育成までの実践的な戦略を網羅的に解説します。ベトナムIT人材採用を考える企業担当者の方は、ぜひ最後までご覧ください。
ベトナムIT人材採用が注目される背景
ベトナムは平均年齢が約30歳と若年人口が多く、大学や専門教育機関がIT分野に力を入れていることから、優秀なエンジニアが数多く輩出されています。政府も「IT産業の振興」を掲げ、テクノロジー分野への投資や海外企業との連携を積極的に推進。さらに、下表のとおり人件費が比較的安価であるため、コストを抑えつつ高い技術力を確保できるのが大きなメリットです。
| 項目 | 日本（例） | ベトナム（例） | 根拠の例 |
|---|---|---|---|
| 平均年齢 | 約48歳 | 約30歳 | （※1）総務省統計局、ベトナム統計総局 |
| 月給相場（ITエンジニア） | 40～60万円 | 10～20万円 | （※2）国内求人サイト、ベトナム現地求人サイト |
| 英語力（TOEIC平均スコア） | 約520点 | 約500点 | （※3）ETS試験データ |
| 大学進学率（IT関連学部） | 15～20％程度 | 25～30％程度 | （※4）国内外の教育機関調査 |
日本とベトナムの文化的親和性の高さも採用面では有利にはたらいています。たとえば、勤勉さやチームワークを重視する気質など、共通点が多いといわれています。こうした背景から、ベトナムIT人材は日本企業にとって魅力的なリソースとなり得るのです。
日本におけるIT人材不足の現状
日本では少子高齢化が進み、IT需要が拡大する一方で、エンジニアの育成や確保が追いついていません。経済産業省の調査では、2030年に最大79万人ものIT人材が不足すると予測されています。大手企業だけでなく、中小企業やスタートアップでも優秀なエンジニアの争奪戦が激化するなか、国内だけで人材をまかなうのは困難になりつつあるのが現状です。そこで海外、とりわけ若い世代が豊富なベトナムからのIT人材登用が注目を集めています。
ベトナムIT人材を活用するメリット
ベトナム人エンジニアは、勤勉さと技術吸収力の高さが特徴とされます。若い世代を中心に英語学習やプログラミング教育が盛んで、JavaやPython、Golangなど幅広い言語を修得。日本語学習者も増えており、日本語能力試験（JLPT）のN2やN3を取得するエンジニアも珍しくありません。また、コスト面では日本と比べて給与水準が低めであり、同じ予算でもより多くの人材を採用できたり、高度なスキルを持つエンジニアを確保しやすくなります。
さらに、地理的にも日本からベトナムへの渡航は比較的容易で、時差が2時間しかないため、コミュニケーションや会議のスケジュール調整がしやすいです。こうしたメリットから、オフショア開発だけでなく正規雇用や派遣といった多様な形態でベトナムIT人材を活用する企業が増えています。
高い技術力と学習意欲
ベトナム国内ではC++やJava、Python、Golangなど多様な言語をカバーする大学や専門学校が増加しており、若い世代の学習意欲も非常に高いです。最新のテクノロジートレンドやフレームワークを取り入れることに積極的で、社内勉強会や資格取得支援制度を設ける企業も多く、プロジェクトのレベルアップに大きく貢献します。
コスト優位性と柔軟な雇用
ベトナムは日本より人件費が安く、社会保険料の負担も相対的に低いため、採用および維持コストを抑えられます。また、正社員だけでなく、フリーランスやプロジェクト単位など柔軟な形態にも対応可能です。プロジェクトごとに必要なスキルセットを持つエンジニアをスポットで確保する、といった運用も比較的スムーズに行えます。
ベトナムIT人材採用の注意点
多くのメリットがある一方で、採用プロセスではいくつかの注意点を踏まえておく必要があります。まずコミュニケーション面。日本語力のあるエンジニアが増えているとはいえ、母国語ほどスムーズではないケースがほとんどです。また、給与相場の上昇にも注意が必要です。ベトナム国内でもIT需要が高まり、優秀な人材ほど報酬アップの傾向が強まっています。さらに、文化や労働観の違いから、曖昧な指示や日本的な「暗黙の了解」が通用しにくい場合があります。契約段階やプロジェクト初期において、ルールの明確化やマニュアル整備を徹底することが大切です。
コミュニケーションと文化ギャップ
日本語能力が十分でないエンジニアに対しては、**通訳やブリッジSE（BRSE）**を配置することでリスクを軽減できます。ベトナムでは報告・連絡・相談の文化が日本ほど浸透していないこともあるので、初期段階から細かいルールを提示し、疑問を感じた際は必ず質問してもらう仕組みづくりが重要です。
ベトナム国内のIT人材不足と給与上昇
ベトナムも急激な経済成長に伴い、国内外の企業が優秀なエンジニアを奪い合っています。給与相場は年々上昇しており、特に英語や日本語が堪能で高度なスキルを持つ人材は需要が高いです。魅力的なオファーを提示し、迅速な採用プロセスを進めることが採用成功のカギとなります。
ベトナム人エンジニア採用の具体的な手順
ベトナムIT人材を効果的に採用するには、採用目標や必要スキル、業務範囲を明確化したうえで、下記のような複数チャネルを活用するのがおすすめです。
求人サイト・エージェント
TopDevやVietnamWorksなどの現地求人サイトに英語やベトナム語で求人を掲載。また、現地採用に強いエージェントを活用する方法もあります。
SNS・オンラインコミュニティ
LinkedInやFacebookのITコミュニティを活用し、直接スカウトを送る方法も有効です。
大学との連携
IT系学部のある大学や研究機関と連携し、優秀な新卒人材を発掘する。
面接・選考プロセスのポイント
オンラインでのコーディングテスト
書類選考だけでは技術力の判定が難しいため、コーディングテストやポートフォリオの確認を行う。
技術面接＋コミュニケーション能力チェック
BRSEや通訳を交えつつ、英語や日本語でやり取りをテスト。
内定から就労ビザ手続きまでのスピード感
在留資格認定証明書の申請や各種書類準備には時間がかかるため、早めの対応が必須。
BRSE（ブリッジSE）の活用
言語と技術の両方に詳しいBRSEは、採用後のプロジェクト進行でも欠かせない存在です。要件定義や進捗管理、文化のすり合わせなど多面的に支援し、コミュニケーションコストを大幅に削減してくれます。日本語能力が高くプログラミングを理解しているBRSEは取り合いになりやすく、給与水準も高めです。
就労ビザ取得と行政手続き
海外在住のベトナム人を採用する場合、在留資格認定証明書の申請や大使館でのビザ手続きが必要です。書類不備や審査状況によって想定以上に時間がかかることもあるため、内定後は速やかに手続きを進めましょう。日本国内ですでに就労資格を持つ人材を採用する場合でも、転職サポートやビザ変更手続きに詳しいエージェントの活用がおすすめです。
受け入れ後の育成と定着策
採用はあくまでスタートラインであり、入社後にいかにスムーズに活躍してもらうかが重要です。まずは日本語学習のサポートや、社内でのコミュニケーションを補完するツールを整備しましょう。加えて、日本のビジネスマナーや就業規則、セキュリティポリシーなどを事前に共有し、OJT（On-the-Job Training）や定期的な研修で適応を促すことが大切です。
給与体系や評価制度、キャリアパスを明確にすることで、エンジニア自身のモチベーションを維持しやすくなります。ベトナムの文化としては、家族やコミュニティを重視する傾向があるため、休日や福利厚生、母国への一時帰国支援などに配慮すると定着率が上がる傾向にあります。
メンター制度とオンボーディング
新しい環境や文化で働くには不安がつきものです。そこで、経験豊富な日本人社員をメンターに任命し、定期的に相談や目標設定をフォローするオンボーディング体制を整えましょう。チームビルディングのイベントやコミュニケーション研修を実施し、信頼関係を築くことも効果的です。
キャリアパスの提示と評価制度
エンジニアの成長が曖昧だと、退職リスクが高まります。将来的にリーダーやマネジメント職を目指せる道、技術スペシャリストとして研鑽を積める道など、複数のキャリア選択肢を提示しましょう。業績やスキル評価の基準を透明化し、定量的な目標を設定することで公正感を保てます。
最新テクノロジートレンドへの対応
ベトナムのITエンジニアはAIやクラウド、ブロックチェーンといった先端技術にも強い関心を持ち、資格取得やオンライン学習を通じてスキルをアップデートしています。企業のDX推進において重要となる、機械学習やデータ解析の知見を備えたエンジニアも増加傾向です。ただし、こうした先端技術分野は世界的に人材需要が高いため、競争が激化しています。報酬面や開発環境の整備はもちろん、スキルアップの機会を提供できる体制を用意し、エンジニアにとって魅力ある企業であることをアピールする必要があります。
成功企業の事例から学ぶポイント
実際にベトナムIT人材を積極的に採用し、成功を収めている企業を見ると、以下のような共通点が確認できます。
日本側リーダー・PMの異文化理解
ベトナムの文化・働き方を理解したうえで、コミュニケーションを密に取る。
BRSEの明確な役割設置
現地と日本を繋ぐ懸け橋をしっかり確保し、要件定義・進捗管理をスムーズにする。
長期的な視点での育成・定着
「コストが安いから雇う」のではなく、会社の戦力として長期的に育成している。
たとえば、ある大手システム開発企業では、最初はオフショア開発でベトナム企業との協業を始めましたが、現地エンジニアの技術力と柔軟性に注目し正社員としての登用を拡大。結果的にプロジェクトのスピードや品質が向上し、エンジニアのモチベーションもアップ。定着率も高くなったといいます。
まとめと今後の展望
ベトナムIT人材の採用は、日本のIT人材不足を補ううえで大きな可能性を秘めています。しかし現地もIT市場が急速に成長し、優秀なエンジニアの争奪戦は激化傾向にあります。採用時には魅力的なオファーと迅速な意思決定、入社後はコミュニケーションサポートとキャリアパスの明確化が重要です。
今後、AIやクラウドなどの先端領域がさらに広がるなか、ベトナム人エンジニアの活躍の場は間違いなく拡大していくでしょう。ぜひ本記事のポイントを活かし、戦略的かつ実践的に「ベトナムIT人材採用」を進めてみてください。優秀なエンジニアとともに、新たなイノベーションを生み出すチャンスが広がります。
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