東南アジア（Southeast Asia）は近年、若年層の豊富なIT人材を武器にオフショア開発先として注目を集めている地域です。 かつてはインドや中国がトップクラスのオフショア先として知られていましたが、近年ではベトナム、フィリピン、インドネシア、タイ、カンボジアといった東南アジア諸国が台頭し、競争が激化しています。
本記事では「東南アジア オフショア開発」というキーワードにフォーカスし、東南アジアならではの魅力やメリット・デメリットを解説しつつ、インドなど他国との比較も行います。最適なオフショア先を選びたい方に向けて、参考データや具体的なポイントを整理しました。
東南アジアのオフショア開発会社を見つけるには？
オフショア開発を検討する際は、まず各国に強みをもつ企業の情報を収集することが重要です。 その後、実績や価格帯、コミュニケーション方法などを総合的に評価し、自社に最適なパートナーを選びましょう。
- オンラインプラットフォームやマッチングサイトの活用
- 業界セミナー・イベントへの参加
- 専門コンサルや現地エージェントへの相談
いずれの方法でも、複数社を比較検討することでトラブル防止や費用対効果の最大化につながります。
オフショア開発とは？
オフショア開発の定義
オフショア開発とは、企業が自国以外の海外拠点に開発業務を委託することで、コスト削減やIT人材不足の補完を狙う手法を指します。代表的なオフショア先としてはベトナム、中国、インド、フィリピン、インドネシアなどが挙げられ、それぞれに得意分野や人件費、文化的背景などの特徴があります。
東南アジアが注目される理由
東南アジア（Southeast Asia）は、豊富な若年層人口と政府の積極的なIT人材育成施策により、急速にIT産業が成長している地域です。加えて、英語教育が進んでいる国・地域が多く、海外案件対応力に優れたエンジニアを確保しやすいという点でも注目度が高まっています。
東南アジアのオフショア開発の特徴
歴史と現状
東南アジアでは2000年代以降、多くの国で外資誘致やインフラ整備が進められました。例えばベトナムは「Doi Moi（ドイモイ）政策」以降に著しい経済発展を遂げ、ホーチミン・ハノイを中心とするITハブが形成されています。フィリピンでもBPO（Business Process Outsourcing）産業が急速に拡大し、大手外資系企業のコールセンターや開発拠点が多数進出しています。
近年はインドネシア、タイ、カンボジアなどのIT教育環境も整備が加速しており、海外企業向けのオフショア開発案件を積極的に受注する動きが拡大中です。
メリット（若年層・英語力・成長性）
- 若年労働力の豊富さ東南アジアは平均年齢が若い国が多く、IT分野での人材供給量が今後も増加傾向にあります。
- 英語力の高さフィリピンやマレーシア、シンガポールなどでは英語が事実上の公用語となっており、海外企業とのコミュニケーションがスムーズに進みやすいです。
- 急成長するIT産業政府主導のIT振興策やスタートアップ支援、外資誘致が積極的に行われ、IT市場が拡大しています。大手外資系企業が進出し、先端技術にも対応可能なエンジニアが増加している点も注目ポイントです。
デメリット（品質のばらつき・文化ギャップ）
- 品質・スキルのばらつき東南アジア全体で見れば優秀なエンジニアも多いですが、企業・都市によっては品質面に差があるのが実状。適切なパートナー選びが重要です。
- 文化・宗教行事による稼働制限イスラム教圏（インドネシア・マレーシア）や仏教圏（タイ・カンボジア）など、各国で独自の祝祭日や宗教行事があり、稼働日の調整が必要となります。
- インフラや法整備の未成熟な地域も大都市圏と地方との格差が大きく、通信インフラや電力が不安定な場合もあります。長期安定稼働を期待するなら大都市やIT特区を選ぶのが無難です。
東南アジアの開発を成功させるポイント
祝祭日・宗教行事への配慮
ラマダン（イスラム教の断食月）や仏教の大型行事など、国ごとの稼働カレンダーを事前に把握し、開発スケジュールに反映させましょう。
コミュニケーションツールと時差調整
東南アジアと日本の時差は比較的小さい（1〜2時間程度）が、それでもオンラインMTGのゴールデンタイムは国やエンジニアの勤務形態によって異なる場合があります。Slack、Microsoft Teams、Zoomなどのツールでこまめに連絡を取りましょう。
英語力のばらつきに注意
国・企業により英語の流暢度には差があります。ブリッジSEを配置する、仕様書や設計書の多言語対応を徹底するなど、ドキュメント面での工夫が重要です。
安定したチーム体制の構築
東南アジアのIT市場は活発で、エンジニアが短期で転職するケースもあります。ラボ型開発で複数名の交代要員を確保したり、ノウハウをドキュメント化して離職リスクに備える体制が理想的です。
開発拠点（都市）の特性を把握
東南アジアのオフショア開発を成功させるには、まず拠点となる都市の特性を正しく把握することが欠かせません。首都圏や経済都市では優秀なエンジニアを確保しやすい反面、人件費やインフラ負荷が高くなる傾向があります。一方、地方都市はコスト面で有利ですが、IT教育や通信インフラが不十分なケースもあるため、都市ごとの強みと弱みを見極めたうえで、プロジェクトに最適な環境を選ぶことが重要です。
東南アジア vs. 他のオフショア拠点：開発比較
| 比較項目 | 東南アジア | インド | 中国 |
|---|---|---|---|
| 人件費 | 安価な国が多いが、都市部では徐々に上昇傾向 | 英語力・スキルを考慮すると依然魅力的 | 都市部は上昇、地方はやや安い |
| エンジニア層 | 若年人口多く、英語対応しやすい（国によるばらつきあり） | 英語堪能、先端技術や大規模開発に強い | 日本語対応なら大連などが強み |
| 政治・経済情勢 | 国によって安定度に差があるが、外資誘致が進む | 政府のIT支援策が活発 | 地域差が非常に大きい |
| 強み | コミュニケーションの柔軟さ、英語教育が進んでいる国も多い | グローバルプロジェクト経験豊富、IT企業数が圧倒的 | 日系企業の実績豊富、サプライチェーン上の連携もしやすい |
| 弱み | 品質ばらつき、政治・文化・宗教上の制限 | 時差・文化の差、離職率の高さ | 日本語非対応の場合は言語障壁 |
東南アジアは英語力や若年人口の多さを強みに、世界的にも注目度が高まっていますが、国ごとに発展度合いや文化・宗教の特徴が異なるため、一括りにせず拠点選定することが大切です。
東南アジアで実績のあるオフショア開発企業を3社紹介
下記では、東南アジア各国で大きな実績を持つ3社を例として挙げます。実際には多様な企業が進出しているため、国・技術領域・言語対応などに合わせて比較検討しましょう。
FPT Software（ベトナム）
概要
- 本社：ベトナム（ハノイ）
- 主なサービス：Web・モバイルアプリ開発、AI・データ解析、クラウドインフラ構築、RPA導入支援
- 特徴：ベトナム最大手のIT企業グループであり、日本語対応エンジニアも豊富
対応範囲
- 業務システム開発（基幹システム、ERP、CRM）
- モバイルアプリ開発（iOS/Android）
- AI・データ分析（機械学習、画像認識、自然言語処理）
- クラウド環境構築（AWS、Azure、Google Cloud）
- IoTソリューション
実績紹介
- 大手金融機関のオンラインバンキング再構築ベトナム国内だけでなく、日本のセキュリティ要求も満たす形で実装。英語と日本語のブリッジSEを活用し、要件定義から運用までスムーズに進行。
- 製造業向けスマートファクトリー導入PLC制御やセンサー連携など、ハードウェアとソフトウェア両面で支援。リアルタイム監視とデータ分析による稼働効率化を実現。
URL: https://www.fpt-software.com/
Accenture Philippines（フィリピン）
概要
- 本社：グローバル（アイルランド登録）、フィリピン拠点はマニラ
- 主なサービス：ITコンサルティング、システム開発、運用保守、BPOサービス
- 特徴：世界有数のITコンサル大手。英語対応はもちろん、多国籍チームによるグローバルPM体制に強み
対応範囲
- 業務システム全般（SAP/OracleなどERP導入支援）
- アプリ開発（Web/モバイル）
- クラウド導入（AWS/Azure/Google Cloud）
- AI・RPA導入、データ分析基盤構築
- システム保守、BPO（コールセンターなど）
実績紹介
- 大手保険企業向けのDXプロジェクト保険商品のオンライン販売プラットフォームを構築。グローバル拠点との連携により24時間開発を実現。
- ECサイトの多言語化とCRM統合フィリピンの英語力を活かし、アメリカ・日本市場向けにもスピーディに展開。カスタマーサポートもBPO一体で提供。
URL: htps://www.accenture.com/ph-en
TMA Solutions（ベトナム）
概要
- 本社：ベトナム（ホーチミン）
- 主なサービス：ソフトウェア開発、テスト、AI・クラウドソリューション
- 特徴：ベトナムの大手オフショア開発企業の一角。欧米企業との取引実績も多い
対応範囲
- 業務アプリケーション開発（Java、.NET、Pythonなど）
- テスト・QAサービス
- IoT・組み込みソフト開発
- AI・機械学習関連システム
- クラウドアーキテクチャ設計
実績紹介
- モバイルアプリ開発で欧米系スタートアップを支援アジャイル手法でユーザーフィードバックを頻繁に反映し、短期間でリリース。UI/UX向上で顧客満足度を高める。
- IoTソリューションで日系メーカーと協業製造ラインの稼働データ収集システムを構築。機器制御からビッグデータ分析まで一貫してサポートし、工場稼働率アップに寄与。
URL: https://www.tmasolutions.com/
東南アジア(オフショア開発)のよくある質問
Q1. 東南アジアのエンジニアは英語以外にどのような言語に対応していますか？
東南アジアのIT人材は、英語をビジネスコミュニケーションの共通言語として利用することが多いものの、実際には国や企業の特色によって多様な言語に対応している場合があります。たとえば、ベトナムならベトナム語、タイならタイ語、インドネシアならインドネシア語（バハサ・インドネシア）などが現地語として使われており、ベトナムやタイのように日系企業が多い国では、日本語が話せるエンジニアやブリッジSEを配置するケースが増えてきています。さらに、中国語や韓国語といった他のアジア言語にも対応可能なオフショア企業が存在するため、プロジェクトの言語要件や自社の社内体制に合わせて企業を選定するとよいでしょう。
Q2. 東南アジア独特の祝祭日や長期休暇はどう影響しますか？
東南アジアには、仏教やイスラム教、ヒンドゥー教など多様な宗教行事があり、それに伴う長期休暇が発生することがあります。たとえば、ベトナムの旧正月「テト」では1週間ほど休暇に入ることが多く、タイでの新年の水かけ祭り「ソンクラン」やインドネシア・マレーシアのイスラム教の断食明け大祭「イドゥル・フィトリ」、フィリピンの聖週間（ホーリーウィーク）なども大型連休として扱われる例です。これらの時期は企業全体が休暇に入る可能性が高く、納期やプロジェクトの進行に影響が及ぶ場合もあるため、事前に現地メンバーとスケジュールをしっかりすり合わせておく必要があります。
Q3. インフラや通信状況が不安な地域もあると聞きますが、対応策はありますか？
東南アジアの主要都市であるホーチミン、ハノイ、バンコク、クアラルンプール、ジャカルタ、マニラなどでは、インターネット回線やモバイル通信が整備されており、日常業務に支障が出るほどのトラブルはめったにありません。ただし、地方都市や離島部に開発拠点を置く場合、停電や通信障害のリスクが高まる可能性があります。そのような状況を想定する場合は、大都市部のデータセンターを利用したり、バックアップ回線や非常用電源を確保しておくことが望ましいです。また、クラウドサービスの活用によってインフラリスクを最小化する方法も有効です。
Q4. 現地視察や対面コミュニケーションを行う場合、どのような点に注意すれば良いですか？
東南アジアの主要都市へは日本から5〜7時間程度のフライトで渡航できる国が多く、比較的アクセスしやすいのが魅力です。ただし、国ごとの入国ルールやビザ要件を確認し、健康面の対策として予防接種が必要になる場合もあります。現地スタッフと対面でコミュニケーションをとる際は、お互いの文化や宗教、食習慣に配慮した行動が求められ、挨拶やお礼の仕方、名刺交換のマナー、禁酒・禁煙エリアの有無など、国ならではの慣習を理解しておくとスムーズに関係構築が進みます。
Q5. 東南アジアのエンジニアはAIやデータ分析、最新技術案件に対応可能ですか？
ベトナムやフィリピンなど、多くの欧米系企業と取引実績をもつ国々では、先端技術分野の開発を経験しているエンジニアが増えてきています。大学や民間のIT教育プログラムの充実によって、AIや機械学習、ビッグデータ解析、クラウド技術を扱える人材も確実に育成されているのが現状です。東南アジア各地では国際的なハッカソンやテックイベントが盛んに行われるようになり、高度なスキルを有する若手エンジニアが豊富に存在するため、大規模かつ高度な技術力が求められる案件にも対応できる可能性があります。
まとめ
東南アジアのオフショア開発は、若年層の豊富なIT人材や英語対応のしやすさ、急成長する市場といった強みを活かし、コストと品質の両立を狙える選択肢として注目されています。一方で、国ごとの発展度やインフラ事情、文化・宗教行事、エンジニアスキルのばらつきなど、多様性が大きい地域でもあります。
プロジェクトの規模や予算、技術要件、コミュニケーション重視度を踏まえ、最適な国・都市・パートナー企業を選ぶことが成功への近道です。
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正直、オフショア開発は難しいです。
ただ成功するか失敗するかは一緒にやるパートナー次第です。
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