
世界規模でIT需要が拡大し続ける中、多くの企業が「ソフト開発のオフショア」を検討しています。オフショア開発とは、ソフトウェアやシステムの開発工程を海外の企業に委託する手法のことです。人件費を抑えながらも優秀な人材リソースや先端技術を活用できるメリットから、大企業だけでなく、中小企業やスタートアップまで幅広く利用が進んでいます。
近年はコスト削減に留まらず、AI・IoT・クラウドなどの先端技術を海外拠点でいち早く取り入れるための戦略的な選択肢としても注目度が高まっています。本記事では、オフショア開発のメリットやデメリット、費用相場や成功のポイントを解説するとともに、具体的な開発会社の選定方法をご紹介します。最後には中国やベトナムなど主要なオフショア先との比較にも触れていますので、ぜひ最後までご覧ください。
ソフト開発(ソフトウェア開発)とは何か

ソフトウェア開発(以下、ソフト開発)とは、コンピュータープログラムやアプリケーションを企画・設計し、実装・テストを経て運用・保守まで行う一連のプロセスを指します。具体的には、要件定義からシステム設計、プログラミング、テスト、導入、運用・保守までを総合的に管理し、品質の高い製品やサービスを提供することが大きな目的です。
近年はクラウド技術やAI、モバイルアプリの普及などにより、開発範囲がますます広がっています。一方で、スピード・品質・コストのバランスをどう最適化するかが課題となっているため、オフショア開発を活用して効率的かつ柔軟に対応する企業が増えているのが現状です。
政府のIT政策とソフト開発におけるオフショアの役割

各国の政府が掲げるIT政策やDX(デジタルトランスフォーメーション)推進施策によって、IT人材の国際的な移動はますます活発化しています。例えば、中国政府は「中国製造 2025」や「インターネット+(プラス)構想」を掲げ、製造業とITの高度化を進めるなかで多数のITエンジニアを育成しています。一方、ベトナム政府はIT産業を国家戦略の一つとして位置づけ、若い世代へのプログラミング教育や英語教育を強化。また、インド政府は「Digital India」構想を推進し、世界最大級のIT人材プールを誇るに至っています。
こうした政策背景を受け、オフショア開発は各国が力を入れる主要産業の一つとなりつつあります。エンジニアの教育水準やITインフラが年々整備されていく中で、世界的にオフショア開発の利用が拡大しているのです。
エンジニアの特徴と教育水準

オフショア先には、英語力や多言語対応に優れたエンジニアが多く集まっています。海外留学や外資系企業での実務経験によって、英語ベースのスムーズなコミュニケーションが可能な層が増加しているのです。また、大学や専門学校で高度なプログラミング教育を受けている人材が豊富で、JavaやPython、AI分野といった実務に直結するスキルを身につけています。さらには、外資系やグローバル企業での開発経験を積んだエンジニアが多いため、最新の技術トレンドやプロジェクトマネジメント手法に精通しているケースも少なくありません。
一方で、日本語対応ができるエンジニアはまだ限られる場合があるため、コミュニケーションを円滑に進めるにはブリッジSEなどの翻訳や調整を担うポジションを活用することが大切です。そうした体制を整えることで、オフショア開発でもスムーズなやり取りが可能になります。
ソフト開発のオフショアで得られるメリット

コスト削減と効率的なリソース確保
オフショア開発最大の利点は、開発コストの削減と迅速なリソース確保です。自社でエンジニアを一から採用・教育するよりも、必要なタイミングで必要なスキルを持つ海外人材を活用できます。
高度な技術力へのアクセス
AI、クラウド、ブロックチェーンなど最先端技術を扱うエンジニアが多い地域を選ぶことで、自社内では得られない専門知識や開発ノウハウを取り入れられます。研究開発(R&D)の分野で強みを持つ企業をパートナーに選べば、より先進的な取り組みにも挑戦しやすくなるでしょう。
時間差を活用した連続開発
日本との時差を上手く利用できる拠点を選べば、開発リソースを24時間稼働させることができます。結果的に開発の効率化と市場投入のスピードアップが期待できます。
オフショア開発を最有力候補として検討しにくい理由

言語・文化面でのギャップが大きい
ブロックチェーンのような新技術を導入する際は、仕様のすり合わせやリスク管理などの繊細なコミュニケーションが求められます。英語で対応できるエンジニアは増えているものの、日本語を使って正確に要望を伝えたいケースでは、対応可能な国や企業が限定されるのが現状です。また、ビジネスマナーや仕事の進め方など、文化の違いによって生じる認識のズレを調整するためには、追加のマネジメントコストや時間がかかります。結果的に、プロジェクト全体の進捗が想定より遅れたり、品質面でのリスクが高まったりする可能性があります。
経済成長によるコストの不確実性
オフショアを選ぶ最大の理由は「人件費が安いこと」ですが、新興国の経済成長やエンジニアの需要増加により、人件費が急速に上昇する場合があります。特にブロックチェーン開発は高度な知識や経験が求められるため、専門エンジニアの獲得競争が激しく、契約時には割安感があっても、長期的にはコストメリットが縮小するリスクがあります。さらに、ブロックチェーンプロジェクトでは運用・保守を含めた長期的なサポートが欠かせないため、その分のコスト見積もりにも十分注意が必要です。結果として、オフショア開発の「安く抑えられる」というメリットだけでは判断しにくい場合が多くなります。
現在最も選ばれている国は?

近年、オフショア先として特に注目を集めているのがベトナムです。まず、もともと親日国として知られる背景に加え、日本語教育に力を入れる若者が増えているため、日系企業とのやり取りを円滑に進めやすいといったメリットがあります。また、ITインフラ整備や政府による産業振興策の後押しにより、IT産業が急速に成長しており、ハードウェアからソフトウェア、AI技術まで幅広い分野で優秀なエンジニアが育成される環境が整ってきています。
さらに、コスト面でのメリットに加えて、英語力をはじめとした多言語対応にも力を注ぐエンジニアが増えていることから、ヨーロッパをはじめとする他地域からの受注も活発化しています。こうした要因が重なって、ベトナムは今やグローバルなオフショア開発拠点として注目されており、日系企業だけでなく世界各国から多数の案件を受けるようになっています。
オフショア開発にかかるコスト・人件費の相場

以下の表は、あくまでも目安となる月額単価の一例です。実際の金額はエンジニアのスキル・経験、為替レート、国や地域の経済状況によって変動します。
職種 | 月額単価目安(日本円) | スキルレベル例 |
---|---|---|
プログラマ | 約10万円~約25万円 | Java、Python、AI領域など |
デザイナー | 約8万円〜約20万円 | UI/UX、モバイルアプリデザイン |
PM/ブリッジSE | 約15万円〜約30万円 | 英語・日本語・現地語でのコミュニケーション対応 |
他地域・国との簡易比較
- 中国
大連や深センなど都市によって人件費の幅が大きい。日本語対応や先端技術に強い人材で選ばれるケースも多い。 - ベトナム
人件費が比較的安く、若年層が多い。英語力や日本語力は企業により差がある。 - インド
世界最大級のIT人材プールを持つが、コミュニケーション面や都市による格差に注意が必要。
コミュニケーション・マネジメント費用の考慮
- ブリッジSEまたは多言語コーディネーターの配置費用
- 現地出張(渡航費、宿泊費、ビザ取得費)
- 翻訳やドキュメント整備コスト
- 進捗管理ツールの導入・運用費
これらを含めたトータルコストを検討することが重要です。
オフショア開発を成功させるポイント

ブリッジSE・PM体制の確立
オフショア開発では、言語や文化の違いによって細かな仕様のすり合わせが難しくなるケースが少なくありません。そこで重要になるのが、日本語・英語・現地語のすべてを理解できるブリッジSEやPMの配置です。彼らが間に立つことで、認識のズレやミスコミュニケーションを最小限に抑え、プロジェクト全体を円滑に進めやすくなります。
オンラインツールを活用した進捗管理
海外拠点とのやり取りが中心となるオフショア開発では、オンラインツールの使いこなしが成果を左右します。チャットツール(Slack、Microsoft Teams、DingTalkなど)、タスク管理ツール(Jira、Redmineなど)、オンライン会議(Zoom、Google Meetなど)を適切に使い分けることで、リアルタイムに状況を共有しやすくなり、時差のある環境下でもスムーズにプロジェクトを進行できます。ファイアウォールの制限や海外ツールの使用可否を事前に確認し、双方が問題なく利用できるツールを選ぶことがポイントです。
多言語ドキュメントの整備
仕様書や設計書が日本語だけだと、誤解や抜け漏れが起きやすくなるため、英語や現地語にも対応したドキュメントを用意しましょう。特に専門用語や業界特有の用語は訳しづらい場合があるため、グロッサリーを作成しておくと便利です。多言語ドキュメントの整備は開発効率や品質に直結するため、早い段階から計画的に進めることをおすすめします。
定期訪問と直接面談による信頼関係の構築
リモートコミュニケーションだけでは得られない情報やニュアンスを把握するには、やはりフェイス・トゥ・フェイスでのやり取りが効果的です。必要に応じて現地を訪問し、相手の文化や仕事の進め方を直接確認することで、より深いレベルでの相互理解が可能になります。定期的に現地担当者と対面でコミュニケーションを図ることで、チームの士気を高め、長期的に安定したパートナーシップを築きやすくなるでしょう。
オフショア拠点との比較:開発環境・コスト・エンジニア層

比較項目 | 中国 | ベトナム |
---|---|---|
人件費 | 都市により格差大(上海は高め) | 比較的安価だが上昇傾向 |
エンジニア層 | 先端技術に強い人材が多い | 若年層の増加で人材プールが拡大 |
政治・経済情勢 | 地域差はあるが、IT投資が活況 | 外資誘致が積極的 |
コミュニケーション | 英語・中国語が中心 | 英語・ベトナム語中心、日本語対応も |
強み | ハイレベル技術・大規模開発が可能 | コスト安・親日国・若い世代が多い |
弱み | 日本語対応が少ない場合がある | 日本語対応は企業により差が大きい |
このように、中国は大都市の人件費が高めですが、AIやビッグデータなど先端技術の研究開発が盛んで、大規模案件にも対応しやすいのが強みです。一方で、日本語が堪能なエンジニアが限られる場合もあり、コミュニケーションコストが高くなるリスクがあります。
一方、ベトナムは若い人口が多く、IT教育も積極的に行われているため、将来的にエンジニア数がさらに増加する見込みがあります。加えて、コスト面でも比較的優位性があり、親日国であることから日系企業との相性も良いといわれています。ただし、企業や個人によって日本語対応のレベルが大きく異なる点には注意が必要です。
最終的な拠点選定では、コストメリットだけでなく、必要とする技術領域やプロジェクトの規模、日本語コミュニケーションの必要度など、多角的な視点から比較検討することが成功の鍵となります。国によって強み・弱みがはっきりと異なるため、自社の開発課題を解決できる最適なパートナーを見極めることが大切です。
オフショア開発の進め方

オフショア開発をスムーズに進めるためには、まず要件定義と見積もりの段階で、開発内容・必要スキル・言語対応(日本語・英語・現地語など)を明確にし、複数の企業から見積もりを取得・比較することが重要です。そのうえで、開発パートナーを選定し、企業の実績・エンジニア構成・コミュニケーション体制をチェックします。具体的には、日本側とオフショア側の両方にプロジェクトマネージャー(PM)を配置し、必要に応じてブリッジSEや通訳などを加えることで、コミュニケーションのロスを最小限に抑える体制を構築します。
また、コミュニケーション設計にはチャットツールやタスク管理ツールの導入が欠かせません。進捗をリアルタイムで共有できる環境を整えるとともに、週次や月次の定例会議を設定し、認識ズレを早期に発見・修正する仕組みをつくります。開発・テストフェーズでは、仕様や設計に基づいて作業を進める一方、ドキュメントやソースコードを多言語で相互レビューすることで品質を担保するのがポイントです。
そして、完成後の納品から運用保守に至る段階では、追加要件が出てくる可能性に備えて契約内容を明確化することが求められます。さらに、長期的なサポート体制を確立し、継続的な改善やアップデートを実施できるようにしておくと、開発効率だけでなく製品・サービスの品質向上にもつながります。
よくある質問(FAQ)

Q1. 英語が苦手ですが、オフショア開発を進められますか?
英語力に不安がある場合は、日本語対応が可能なブリッジSEを配置したり、日本語窓口サービスを提供する開発会社を選ぶとスムーズです。翻訳ツールや通訳サービスを組み合わせる方法もありますので、事前に相談しましょう。
Q2. どの国や都市を選べばいいかわかりません。
まずはプロジェクトの規模・内容・予算を明確にし、必要な技術領域・言語対応・時差などの要件を整理しましょう。各国に強み・弱みがあるため、最適な地域を選ぶには専門コンサルやオフショア開発マッチングサービスを利用するのがおすすめです。
Q3. コストが安いところを選びたいのですが、品質が心配です。
コストだけに注目すると、品質や納期面でのトラブルが起こりやすくなります。安価でも実績やエンジニアのスキルが高い企業は存在しますが、必ずポートフォリオや過去の開発事例を確認しましょう。オンラインミーティングやテストプロジェクトで見極める方法も有効です。
Q4. 大規模プロジェクトでも対応可能ですか?
オフショア拠点によっては、数百名規模の開発チームを編成できる企業も珍しくありません。大企業やSlerとの協業実績が豊富なパートナーを選ぶことで、プロジェクト管理体制やクラウドインフラなど、大規模開発に必要なリソースを確保しやすくなります。
Q5. 法的なリスクや労務管理はどうすればいいですか?
現地の労働法や契約形態は日本と異なるため、ローカルに詳しい法務担当やコンサルティング会社のサポートが不可欠です。契約書の作成やコンプライアンス対応、知的財産権の保護など、専門家のアドバイスを受けながら進めましょう。
まとめ|ソフト開発のオフショアで新たなビジネスチャンスをつかもう
「ソフト開発のオフショア」は、人件費削減や先端技術の活用など、多くのメリットをもたらす選択肢です。一方で、言語・文化の違いやコストの上昇リスクなど留意すべきポイントも存在します。成功の鍵は、事前の要件定義をしっかり行い、最適な開発パートナーと適切なマネジメント体制を構築することにあります。
SKILL BRIDGEでは、海外のIT開発企業情報を無料で掲載し、オフショア開発の企業マッチングや契約業務サポートを提供しています。中国やベトナム、インドなど、各地域の特性を踏まえて最適なパートナーを探したい方は、ぜひご活用ください。オフショア開発を通じて、新たなビジネスチャンスや技術革新の可能性をぜひ掴んでみてください。